スタイリストデビューは早いほうが良い?
N’SOLは新卒入社から2年でのスタイリストデビューのカリキュラムでございます。
きっちり2年でデビュー
2年かからずちょっと早めにデビュー
ちょっと遅れてデビュー
と言った感じであくまでも基準が2年で前後することはありますし、遅いからと言って悪いわけではありません。
中には先に2ヶ月の厳しい研修を経てエステティシャンとしてデビューするスタッフもいるので、2年以上かかるスタッフもいますし、
中には爆速で進行していくスタッフもいます。
美容学校の生徒さんからヒヤリングしてみると、「デビューまでが早い」というサロンの「売り」は魅力的に映るようです。
半年や1年でデビュー!そんなサロンも最近は増えてきているようですね。
早期デビューが魅力的な理由としては、
そんなやる気に満ちた若者が多いなんて、美容室の未来も明るい!
そう思いたい、
で・す・が!
実際のところはと言うと、
など、アシスタントの時期をできる限り早く終えたいという
やる気の裏にある隠された「本音」があるのも事実。
むしろそっちの方が理由としては強いという生徒さんもいるようです。聞いた話です・・・
私はデビューは早くてもいいと思います。
実際私も1年3ヶ月ぐらいでスタイリストになりました。
おかげさまで地獄のような「シャンプーマシーン」を短期間で終えることができましたし、
手荒れも幸い軽度で済みました。
あまりの手の荒れなさに、「吉田君は手が綺麗だね、サボってるもんね。」という嫌味を言われるほど手が荒れませんでした。
まあ、実際サボってたんですけどね。
当時は「手荒れは美容師の勲章」
みたいな言われ方をしていて、「手荒れが酷い人ほど頑張っていて、美容師として成功する」
なんて言われていたぐらいです。
今それ言ったら大問題ですよね。手荒れが評価基準なんて。
ちょっと横道にそれましたが、
おそらく、
速くデビューすることは誰でもできます。
営業中に練習できたり、たくさんウィッグを支給してくれたり、外部講師が定期的に講習に来てくれたり、
という「企業努力」のもと、早々にカットを習得できます。
ある程度カットできるようになり、テストに合格し、
入社後半年で「おめでとう、明日からスタイリストデビュー!」となったとします。
もうお客様の前では「一人前」のスタイリストとしてお店に立つわけですね。
まあ、問題ないと思います。
「髪を切る」だけならば。
サロン現場での「学び」とは?
ここからは批判覚悟で私見を述べますが、
ただ髪を切れるようになっただけのスタッフを、私は「スタイリスト」と呼びたくありません。
髪を切れる = お客様が喜ぶ
ではないからです。
半年や1年での早期デビューは決して悪くありません。
問題は、その短い期間の中で
「カット以外の何を学ばせているか」です。
カットするだけなら、おそらくちょっと練習すればだれでもできるし、サロンの責任者が責任を持てるならそれでいいと思います。
「カットができる」と「サロンワークができる」は、まったく違うのです。
これだけはハッキリ言えます。
「カットができるスタッフ」を育成することより、
「サロンワークができるスタッフ」を育成することの方が圧倒的に重要です。
私はきっと「古い人間」にカテゴライズされるので、ジジイ何言ってんだと思われても仕方ありませんが、
営業時間中に練習をさせるのは悪いとは思いませんし、アンソルもそういう日はありますが、
「売れっ子になるための大切な要素」を学ぶ機会を奪っていることは確実です。
サロンワークでのスタイリストたちのカウンセリングや動き、カットのプロセスやスピード、お客様の心理状態を見極める洞察力と気配り、忙しい中での施術の組み立てやスタッフ同士の連携、施術説明や商品説明の実践・・・、
挙げたらきりがないぐらいの「学び」(OJT) がこのサロンワークの中に詰まっています。
そして「実践」と「経験」の象徴でもある「モデル集客」
デビューまでにこのモデルを何人担当してきたかが大事です。
もちろん、センスが良くて最短で試験に受かり、少ないモデル数でデビューする人もいるでしょう。
しかし、
デビューができたとしてもそこに「深み」がなければ、結果的にデビュー後につまずくことになります。
「失敗」や「挫折」が全くないままでお客様からお金をもらって満足させてあげられるサービスができる確率は低い事の方が多いのです。
おそらく指名数は伸びない、もしくは一定のところで失速します。
昔と違って、営業時間もできるだけ短くして生産性を上げる努力を企業はしていますし、モデルもSNSで簡単に集められる。
駅前でのモデルハントなんてしなくてもいい時代です。
よくナンパと間違われたなー。
そう考えると、
しっかりとサロンワークで
お客様とできる限り多く接し、
顔と名前を覚えてもらい、
毎回シャンプーの指名をもらい、
スタイリストのいい仕事を見てを盗み、
毎日、
モデルを呼んでトレーニング。
なんならサロンワークでスタイリストのお客様を奪うぐらいのインパクトをお客様に残す。
これはサロンワークにしかチャンスは無いのです。
カウンセリングの精度はここで違いが出ます。
ぶっちゃけ、私はカットよりもカウンセリングの方が大事だと思ってるので。
お客様に支持されるような「笑顔と接し方」で毎日のサロンワークを、アシスタントの頃から心掛けている。
そしてモデルトレーニングを積極的にとりくむ。
実際、デビュー後に短期間で指名数を伸ばしていくスタッフはこの2つを実践しているだけでなく、
デビュー後も「モデルを呼んで」練習しています。
逆に、センスが良くて最短で試験に受かり、少ないモデル数でデビューする人ほど、
デビューしたとたん練習しなくなります。
過去の記事でも言いましたが、
スタイリストデビューは「スタートライン」に立っただけです。
スタートラインに立つまでの間に、
どれだけ練習し、どれだけ経験し、どれだけ失敗し、どれだけ学んだのか。
ごく稀にセンスだけで1位でゴールする人もいるかもしれません。
しかし長い美容人生において、ほんの一時的にそうなることもあるだけで、最後は「深み」のある人が勝つようにできています。
人としての深み。技術的な事ではなくて。
SNSはあくまでも「入口」
今は「方法」や「仕組み」があふれています。
SNSでたくさんフォロワーを集め集客もできる時代です。
ホットペッパービューティーでこうやれば新規が増えますよ、
インスタグラムでこうすれば閲覧とフォロワーが伸びますよ。なんてね。
もちろん集客は美容室においての生命線であることに間違いはありません。
個人が無料で発信できる便利なツールを使わない手はないので、
やらないよりは、やったほうが絶対良い。やるべき。
しかしそれは時代の流れの「集客の仕組み」をうまく利用する術があるだけで、顧客満足に直結するものではありません。
実際の戦場は「サロン」の中にあるのです。
サロンの中だけでしか、美容師の「リアル」は存在しないのです。
フォロワーの多い美容師の真似事をするのは構いませんが、
SNSを見て期待値が上がった状態でお店に来ても、
「がっかり」させたらそれは単なるお飾りです。
どんなにフォロワーを集めても、担当できるお客様は限りがあります。
毎度おなじみ、1対1の接客業に一発逆転はない。
ジジイうっせーわ、と思うでしょうが、
来ていただいたお客様1人1人に向き合い、
100%に近い確率でまたお店に来てもらうことが、もっとも価値のある「集客」であることは今後も変わらないのです。
「仕組み」で「スタイリストデビュー」と「集客」を成功させたとしても、
「深み」がなければ長期的に成果を出し続けることはむずかしい。という話です。
以上、「深み」が足りなくて苦労した過去を持つ吉田がお送りいたしました。てへぺろ
ではまた。