経営においては、「誰をバスに乗せて、誰に降りてもらうかが重要である。」
名著「ビジョナリーカンパニー」に書いてあるんです。
バスに乗せた人の目的地とバスの行き先が同じであれば、自ずといい方向に向かって走っていくし、
逆にそのビジョンにコミットしない人を乗せることで、バスはとんでもない方向に向かって走ってしまうということです。
ところどころ目的地に着いては止まり、また目的地を設定しつつ最終的ゴール設定もなく常に目的地をアップデートしながら進む旅なのではありますが、
やはり道中渋滞に巻き込まれたり、衝突事故が起きてしばらく修理が必要となる、なんていうトラブルが発生する場合があります。
順調な旅であることにこしたことは無いのですが、何が起こるかわかりません。
「10年で10店舗!」
そんな野望を抱きながらバスを走らせた私は、行き先だけ掲げて「どんな方法で、どんな仲間で、どんな幸せをつかみ取るのか」を明確にしないままバスを出発したわけですが、
目的地になかなかつかなければ嫌になって降りたくなる、嫌いなメンバーがいるから降りたくなる、なんか乗ってても心地よくなくて車酔いして一旦降りたくなる。
これが「離職」なのでしょう。
まあ、私の運転するバスで、車酔いしたメンバーが多くて途中下車されたのが、今の現状です・・・。
逆に、バスのデザイン、メンバーの雰囲気、バスの目的地やコンセプトに魅かれて乗り込みたいと希望するメンバーもいる。
これが「求人」にあたるのでしょう。
だから目的地やゴールを明確にしないと、乗っていいのかわからない。と思いがちですが・・・。
偉大な企業への飛躍をもたらした経営者は、まずはじめにバスの目的地を決め、つぎに目的地までの旅をともにする人びとをバスに乗せる方法をとったわけではない。
まずはじめに、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、その後にどこに向かうべきかを決めている。
とのこと。
このバスでどこに行くべきかは分からない。
しかし分かっていることは、適切な人がバスに乗り、適切な人がそれぞれふさわしい席につき、不適切な人がバスから降りれば、素晴らしい場所に行く方法を決められる。
つまり、どんなに素晴らしい場所を目的地にしても、そこに行くメンバーがそれにふさわしいメンバーでないとたどり着けない。
しかし、素晴らしいメンバーであれば、そのメンバーでたどり着ける場所ならどこでも最速で行ける。
そんな感じだろうか。
状況に応じて目的地を変更しなければならないこともあるが、素敵なメンバーがいるからという理由でこのバスに乗っている人は、目的地が変わろうと降りようとはしないのである。
そして適切な席に座り、やるべきことが明確なら管理体制も乱れない。
ビジョンや目的が明確になっても、そのバスに不適切な人がいることで進行の妨げになったり、知らぬ間にバスを前に進めるための燃料(人的財産や顧客やノウハウ)を奪われることにもなる。
メンバー達には、あとからでも努力によって「知識」や「技術」などを教育できるのだが、根深くて変えられないものがある。
それは、「性格」です。
性格に紐づいた「価値観」「労働観」はなかなか変えられるものではない。
どんなに高レベルの技術や、高品質の商品でも、提供する人によってその輝きは違ってくる。
感じが良い人や、気遣いができる人、そう、「性格の良さ」があふれ出している人から提供されたほうが、何倍も輝き、価値が上がるのである。
経営サイドからすれば、技術力や知識、そして実績などが豊富なスタッフを喉から手が出るほど欲していると思いますが、
自分の性格に合わなければ、今いるメンバーの性格とも合わない可能性もあるし、自社のブランディングに則した行動を嫌う場合もある。
面貸しや業務委託のような業態が増えているのは、こういったことが比較的クリアされた状態で経営できるからかもしれません。
以前、私は「会社は家族ではない」と断言しておりましたが、
配偶者選びも、「目的」をもって選ぶ人なんて稀だと思うのです。
「お見合い結婚」の場合もあるので、適しているかわかりませんが、
「この人と結婚するメリット」だけを条件に選んで、その人の「所有物」だけで心から満たされた人生を歩める「ドライ」な人がどれぐらいいるのでしょうか。
また、結婚の先に目的地やゴールなんてあるのでしょうか。
困難があったとしても共に乗り越えられるからこそのパートナーであり、有意義な人生にするにあたり必要であるからこそのパートナーであるべきだと思うのです。
パートナーとの「モノ」を共有したいのか、パートナーとの「時間」を共有したいのか。
そういう意味では、会社における「パートナー選び」はとても大事ですよね。
もちろん、仕事をする上では好き嫌いで動いてはいけない部分もあります。大人として。
しかし、職業と組織の性質上、スタッフのチーム力はそのままダイレクトに業績に強く結びつくのです。
その組織のペルソナから大きく外れている人により、組織にコミットしている大切な人財を失ってしまうこともあるのです。
法律上、「バスから降りてもらう」ことがなかなかできないのが現実ですが、
乗ってもらいたい人を見極めることはできそうですよね。
何よりもお給料や労働条件が良いバスを選びたくなる人は、
お給料や労働条件で不満を感じた瞬間、バスを降りたくなるのかもしれません。
経営者としては、バスに乗ってもらった以上、やはり快適に目的地に運び、その目的地に着いたら、
その目的地よりもさらに魅力的な目的地まで一緒に行くことをしなければいけないのかもしれません。
スタッフみんな性格は違うし、人によって幸せで快適な目的地は違うのかもしれませんが、
できることなら会社・スタッフ・お客様、
すべてが幸せになる目的地をしっかり決めておきたいものです。